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奨学金の保証人と連帯保証人,その違いはこれほどまでに恐ろしい

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奨学金は借金,借金には連帯保証人と保証人が必要

◆日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学,私も学生時代に借りていました.お借りたのだから,借金したということです.

卒業後,諸事情で返済期限猶予届を出して支払いを待ってもらったこともありました.先立つものがなかったからです.

その後,経済的になんとかなったので,返済をすませました.

そして,連帯保証人だった親と,保証人になってくださった方(近くに親戚がいなかったので,親族以外の方に無理にお願いしました)に返還が済んだことを報告しました.

二人とも喜んでくれました.だって,私の借金をかぶる心配がなくなったのですから!

旧育英会も現在の日本学生支援機構も,奨学金を借りる際に「人的保証制度」を選択した場合,「保証人」「連帯保証人」の両方が必要です.

大学入学時は多くの学生が未成年なので,
連帯保証人は親(親権者もしくは親権者がいない場合未成年後見人)
保証人はおじ・おば・兄弟姉妹など父・母を除いた4親等以内の親族
がなるように指定されています[1]

返還の責任の順番はこうです.
①奨学生本人
②連帯保証人
③保証人

知り合いの借金の保証人/連帯保証人になったけど,知り合いが夜逃げしたから借金を全部肩代わりして・・・というのはドラマで良くある話.

実際,保証人と連帯保証人では債務がおよぶ範囲が大きく違います.でも日本学生支援機構の「人的保証制度」のページにはそんなことは一切書かれていないのです.

では,連帯保証人と保証人の違いは何なのでしょう?奨学金を借りることになる前に,もしくは借りた後でもぜひ知っておいてください.

保証人は連帯保証人より保護されている

f:id:browncapuchin:20160510152253p:plain債権者(貸し主)から債務者(借り主)が300万円を借りました.親戚のおじさんがその保証人になってくれました.おじさんは,貸し主と保証契約を書面で結びました.という状況があったとします(いや,おじさんも泰然自若とはいかないのですが...)

保証人は,借り主が300万円(元本)を返さないときには,元本だけじゃなく利息も支払わなければなりません(保証債務自体についての違約金や損害賠償についてはあらかじめ取り決めした分のみ)

でも,返済する前にできることがあります.

保証人が使える制度その1:催告の抗弁権

仮に,借り主がよんどころない事情によって返済が滞ったとします.

当然,貸し主は保証人に連絡します.そして「借り主の代わりに返済しろ」と請求します.

この場合,保証人は「うちにいきなり請求するんじゃなくて,まず借り主に請求してくれ!」とつっぱねることができます.

これが「催告の抗弁権」です.

保証人は,貸し主が支払いを請求してきたとき,借り主に支払いを求めるように促して,返済を拒むことができるのです.


ただし,借り主に返済能力がなくなれば抗弁権を使っても無駄です.また,借り主が破産したり行方不明になったときは抗弁権を使えません.保証人が代わりに借金を返済しなければなりません・・・

保証人が使える制度その2:検索の抗弁権

保証人につっぱねられた貸し主が,借り主に催告してけれど返済してもらなかったとします.当然,貸し主は再び保証人に返済を迫ります.

この場合でも,借り主に差し押さえできる財産があることを証明すれば,保証人は貸し主からの請求を再びつっぱねることができます.

これを「検索の抗弁権」と言います.

ざっくり言うと,保証人は,貸し主の請求を2回つっぱねることができるのです.


無論,催告/検索の抗弁権を行使してもなお返済を迫られ,もし連帯保証人がいなければ返済せざるを得ません.それでも,保証人が返済を迫られる事態に陥ったとしてできることは次の連帯保証人より多いのです.ここがとても大切です.

また,保証人が2人以上いる場合,保証人が引き受ける借金(保証債務)は頭割りになります.300万円の借金に対して保証人が3人いたとしたら,一人頭の債務は100万円になります.これを「分別の利益」と言います.
他にもありますがここでは割愛します.

連帯保証人はつっぱねられない

一方の連帯保証人(借り主のお父さんとしておきます)は,もし貸し主が返済を請求してきたら保証人のようにつっぱねることができません「できない」というのは非常に大きな違いなのです.

なぜ「できない」のか,それは連帯保証人には告の抗弁権も検索の抗弁権もないからです.

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①「まず借り主に請求してくれ!」とつっぱねる催告の抗弁権
②「差し押さえでお金になる物があるでしょ!」とつっぱねる検索の抗弁権

連帯保証人には,これらの権利がないのです.さらに加えると,頭割りで返済額が少なくなる分別の利益もありません.

 

早い話が,貸し主は連帯保証人さえ押さえれば,保証人のようにつっぱねられることなく返済を受けられるわけです. 

だからたいていの保証契約書の保証人欄には「連帯」がもれなく付いてくるのです.

さらにつけ加えると,連帯保証人に請求が来たら,それは借り主に請求が来たのと同じことになります(請求の効力は借り主=債務者にも及ぶ).

連帯保証人は保証人よりも恐ろしいほど立場が弱いのです.

ざっくり言えば,連帯保証人は,金貸しが「金返せ」と言ってきたら拒むことはできなません.借り主に返済能力があろうとなかろうと何も言い返せません.

つまり,日本学生支援機構は,奨学生じゃなくて,直接,連帯保証人に返還を請求することだってできるのです.連帯保証はそれほど金貸しに有利な契約なのです.(民法447条,452条,454条,456条等より)

人生でもっともなりたくない立場の一つ,それが連帯保証人です.

なお,保証債務は書面(または電磁的記録)で契約しなければ効力がありません.日本学生支援機構(旧日本育英会)から奨学金を借りるとき,かならず書類を提出します.これを「要式行為」といいます.保証契約を要式行為とする旨の法改正は平成16年に行われたとのことです.

他にもまだある

さらに付け加えると,保証人の項で述べた「分別の利益」もありません.日本学生支援機構から奨学金を借りるときには連帯保証人と保証人が必要ですが,保証人の保証債務は頭割りになります.しかし,連帯保証人の保証債務はそうはなりません.機構は連帯保証人に全額を請求できます.

33万人の延滞者の後ろには33万人の連帯保証人と33万人の保証人がいる

奨学金を返済できなくて自己破産した人は2014年度末で1万1千件あまりにのぼります[2]

厳しい言い方ですが,奨学金を借りた本人は自己破産で済むかもしれません.しかし,連帯保証人もしくは保証人になった人は,機構から「一括返還」を求められることを忘れてはいけません.

日本学生支援機構『奨学金 返還のてびき』平成25年度版p.7には「延滞し,督促しても返還しない場合は,返還期限が到来していない分を含め,返還未済額の全部,利息および延滞金の一括返済を請求すると共に,支払督促を申し立てることの予告をします.」と書かれています.

その後の手順はこうなります.
裁判所に支払督促申立
→仮執行宣言付支払い督促申立
→強制執行

◆また,2016年3月4日の記事によれば奨学金延滞者は17万人にのぼっています[3]

そして,わずか1年で延滞者数は33万人へとほぼ倍増しています[4]

33万人の奨学金延滞者の後ろには,33万人の連帯保証人がいます.さらにその後ろには33万人の保証人がいます.機構にはこれらの「人的保証」があるのです.

奨学金は借金です.借りたお金は返すのが筋です.でも,事情によって本人が返せなくなったら,親と親族に「強制的に肩代わりさせるシステム」を機構側は最初から用意しているのです.連帯保証人と保証人という,機構にとって二重のセーフティネットを

なお,保証人・連帯保証人になってくださる親族がいらっしゃらないケースもあると思います.この場合,それらが不要な「機関保証制度」の手続きをとることになるでしょう.ただし,機関保証制度を利用する場合,毎月の貸与月額から保証料月額が天引きされたり,未成年の場合には申込時に親権者もしくは後見人が必要です.他にも注意事項があるようですので,手引き等を良くお読みください.

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それと日本学生支援機構が平成29年度から開始する予定の給付型奨学金の採用は全国の高校に割り振られるそうですが,人数は1校から数名程度とのこと[5]

これを当てにするのではなく,給付型奨学金を用意している大学を受験前から調べることをお薦めします.

ちなみに東京都内の早稲田,明治,青山学院,立教,中央,法政(いわゆるWMARCH)について記事にしました.特に,首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)以外の国内高等学校出身者で早稲田・青山学院・立教・中央・法政の入学を目指す方に特化した給付型奨学金を各校が用意しています.是非ご笑覧ください.
日本学生支援機構のローンに苦しまない給付型大学奨学金のすすめ
 

所得制限はありますが,小池都政において東京都在住の私立高校生には授業料相当分の給付が見込まれます.都政の動きはチェックしておきたいです.

なぜ小池知事は私立高に給付型奨学金を投入せざるを得なかったのか?


ではまた.


◆参考資料(リンクではありませんので検索窓に入れて検索してください)

[1]人的保証制度-JASSO
[2]第1部・悲しき奨学金 (3)破産しても消えない:新貧乏物語:中日新聞
[3]延滞者17万人「奨学金」に追い詰められる若者たち - Yahoo!ニュース
[4]奨学金の返済滞納者は33万人で滞納額は889億円『奨学金地獄』で食費が月3000円も-ニフティニュース
[5]給付型奨学金制度の設計について <議論のまとめ>文部科学省給付型奨学金制度検討チーム平成28年12月19日