読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

本当に「普通のサラリーマンの老後は何とかなる」の?塚崎公義教授の記事は甘すぎる

雑感
【スポンサーリンク】

f:id:browncapuchin:20160803171410p:plain

甘すぎる記事


ツイッターのTLに流れてきた記事です.退職金も年金ももらえる「普通のサラリーマン」は,老後のお金について過度な心配をする必要はない,と主張しているのですが,読んで啞然としました.これが商学部教授の言うことなのでしょうか?

blogos.com

では,かいつまんで見ていきましょう.

60歳で定年を迎えるとして、男性は平均余命が23年あります。妻が夫より2歳年下だとすると、妻の平均余命は30年あります。家計調査(注)によれば、 無職世帯の平均支出額は60代前半が月額30.8万円、65歳以上が月額27.6万円となっていますので、妻が90歳になるまでの生活費は、ほぼ1億円かかることになります。

 

この平均支出額は夫婦2人ではなく,2.5人分とのことです.夫婦2人なら60代前半が月額24.64万,65歳以上なら月額22.08万.この額だと約8,100万円になります.このあたりの試算はいろいろあるようです.こちらでは月額約27万円としていました(老後資金の必要額はいくら?簡単シミュレーション | 50代アラフィフから考えるゆとりある老後の資金戦略).

年金を考慮しないで夫婦ともに無職で90歳を迎えるまでに必要な生活費をざっくり8,000万円としておきましょう.

さて,BLOGOS記事を書いた塚崎公義久留米大商学部教授(以下,敬称略)によれば,「退職直前の金融資産が住宅ローンなどと均衡」していて,2,000万円弱の退職金がもらえるなら,70歳まで年金受給開始を遅らせれば,年金だけで暮らしていけるとのことです.1億円だろうと8千万円だろうとそんなに貯蓄しておく必要はないと主張しています.

その根拠はこうです

厚生労働省によると、夫が平均的収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)42.8 万円)で 40 年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯が年金を受け取り始める場合の給付水準は、221,504円となっています。年金の受け取り 開始年齢を70歳まで待つと、この金額の42%増が受け取れますから、月額31.5万円になります。これなら、老後の生活は年金だけで何とかなりそうです。

これは,「老齢厚生年金の繰り下げ支給制度」によります.諸条件はありますが,年金受給開始を最大60ヶ月(5年)繰り下げると,0.7%×繰り下げ月数分,年金額が増えます.65歳から支給される分を100%とすれば,70歳からの支給にすれば142%支給されることになります.

しかし,この制度を利用するには,60歳〜70歳の10年間を年金に頼らず生活しなければなりません.どうすればいいのでしょう?

 

 

 記事にはこう書いてありました.

60歳で退職し、退職金でローンをすべて返済し、手元に2000万円残るとしましょう。65歳までは何とか働いて生活費を稼ぎます。65歳から70歳まで は、退職金を取り崩しながら食いつなぐとします。月額27.6万円だと1650万円ほどかかります。残った350万円は、万が一の時のために持っておきま しょう。何事もなければ葬儀費用として相続しましょう。

こうして見ると、退職直後に2000万円あれば、何とかなる計算になっています。一生同じ職場に勤めたサラリーマンは、高卒事務系で2000万円弱の退職金が期待出来るようですから、多くのサラリーマンにとって、退職直前の金融資産が住宅ローンなどと均衡していれば、何とかなるということのようです。足りない場合でも、60歳以降の仕事量を増やして補えば、何とかなるでしょう。今後は労働力不足の時代になりますから、高齢者が仕事を見つけることは、それほど難しくないはずですから。

 

さて,これを読んでどう思いましたか?

①住宅ローンを退職前もしくは退職金で完済できるでしょうか?
②仮に完済できたとして,残金はどれくらいあるでしょうか?それで65歳までの5年間,生活できるでしょうか?
③65歳まで働けるでしょうか?
④年金繰り下げを申請したところで,果たして月額31.5万円支給されるでしょうか?


ざっくりですが,一つずつ見ていきましょう.


①住宅ローン

 

住宅ローンを完済した子持ち男性サラリーマンを対象にした調査によると,住宅購入時平均年齢が37歳,ローン完済期間は13.7年となっていました(「住宅ローン完済」の実態調査).デキる男は50歳くらいでローン返すのですね.

でも,そんな人はむしろ少数じゃないでしょうか?

昨今の晩婚化の影響もあり,35年ローンで家を買ったら60歳の定年までにローン完済しないケースは当然あるでしょう.なにしろ,お金を貸す側の銀行がこう述べているのですから.

昔とくらべると、結婚する年齢が上がった分、子どもを持つ時期も遅れ、家を買う年齢も高くなりました。 国土交通省の住宅市場動向調査(2013年)によれば、中古を除き住宅を初めて購入した人の平均年齢は約38歳。仮に40歳で念願のマイホーム購入に踏み切ったとして、35年ローンを組めば、完済は75歳。60歳定年の前提にたてば、退職後15年間もローンの返済が続く計算になります。(出典:武蔵野銀行|どうする?退職後の住宅ローン

 

「中古を除き住宅を初めて購入した人の平均年齢は約38歳」.それから35年ローンを組めば,73歳までローンを返済しなければならないのです.60歳でローン全額返済の前提でローンを組んでいるわけではないケースを塚崎記事は一切考慮していません.


 

②退職時ローン完済の場合の退職金残高


では,60歳の時点で退職金をはたいてローンを完済したら,手元にはどれだけのお金が残るのでしょう? 

退職金で完済すればいいと考える人でも、実際、退職時の住宅ローン残高がどのくらいで、退職金の何割程度の金額になるのかを把握している人は、意外と少ないように思います。

大卒の退職金平均は2156万円(*2)。一方で、40歳で3千万円の35年ローンを、2%の全期間固定金利で組んだ場合、60歳時点の残高は、約1500万円。退職時に完済すれば、退職金の7割近くが消え去る計算です。

変動金利や固定金利期間選択型を利用している人も多いでしょう。その場合、当初の適用金利はもっと低くなりますが、将来の金利動向に左右されるので、退職時の負債がどうなるかは誰にもわかりません。住宅ローンの返済期間は長いですから…。(*2:2013年就労条件総合調査結果の概況(厚生労働省)/勤続年数35年以上の定年退職者で「大学卒(管理・事務・技術職)」
(出典:武蔵野銀行|どうする?退職後の住宅ローン

 

退職金の残額は約2,100万円から約650万円になってしまいました.75歳まで組んだローンを退職金を使って60歳で返済すると2,000万円の老後資金なんて残らないかもしれません.


さらに言えば,退職金は2000万円も出ない可能性のほうが高いかもしれません.

f:id:browncapuchin:20160803083726p:plain
(図の出典:退職金〜データから退職金額の推移をまとめました〜


平成24年の退職金の平均額は,

大学卒(管理・事務・技術職) 1,941万円
高校卒(管理・事務・技術職) 1,673万円
高校卒(現業職) 1,128万円

とのことです.なお大卒管理系退職金1,941万円は勤続年数20年〜35年以上の平均です.結果の概要(5 退職給付(一時金・年金)の支給実態)|平成25年就労条件総合調査結果の概況|厚生労働省

退職金の計算式は企業のよってまちまちだと思いますが,勤続年数が大きく関わるように規程している企業がほとんどだと思います.

実際,大学卒(管理・事務・技術職)でも勤続年数によって退職金はかなり違いがあります.

勤続年数と退職金
20〜24年 826万円
25〜29年 1,083万円
30〜34年 1,856万円
35年以上 2,156万円

終身雇用制が崩れ,転職を重ねる方も増えている昨今,退職金はどうしても目減りする傾向にあるというのに,ローン完済してなお退職金が2,000万円も残る方がどれほどいるのでしょう?

 

③65歳まで何とか働けるでしょうか?


企業が60歳以降の再雇用を望む人材はそう多くないかもしれません.

「メーカーであれば匠と呼ばれる真似のできない職人技の持ち主。たとえば特殊溶接やレンズの研磨に長けた熟練度の高い技能者だ。社内外でその分野の第一人者と言われる専門技術者は手放したくない」(中村氏)

実際に技術の流出を防止する狙いもあり、現役時代と同じ給与を払う仕組みを設けている企業も多い。しかし、そういう人材は1割にも満たない。

事務系では、グローバル事業で活躍できる人は貴重な存在だ。中村氏は「外国の税務会計に通じた経理の経験者や労働争議対策など海外現地法人の人事の経験者は重用される。海外事情に詳しく、語学ができる人は必要な人材」と指摘する。(出典:定年後、再雇用される人、捨てられる人 60歳からの働き方【1】再雇用:PRESIDENT Online - プレジデント

 

また,再雇用されたしても,どうしても賃金は低くなります.

現在は公的年金の受給開始年齢が65歳に引き上げられたことで、原則、希望者は引き続き定年後も働けるようになりましたが、再雇用された場合の賃金を定年到達時の賃金と比較すると、6割近くの人が1~4割減となっています(*1)。(*1:2008年高年齢者雇用実態調査結果の概況(厚生労働省)
(出典:武蔵野銀行|どうする?退職後の住宅ローン


それでもやりくりすれば何とかなるかもしれませんが・・・というかやりくりしないといけません.しかし,賃金以前の問題として,在職中にスキルを蓄えた方以外の方は,希望の職種等での再雇用されること自体が困難かもしれないのです.

「60歳以降の仕事量を増やして補えば、何とかなるでしょう。今後は労働力不足の時代になりますから、高齢者が仕事を見つけることは、それほど難しくないはずですから。」という塚崎記事はあまりに楽観すぎると思うのは私だけでしょうか?

 

④繰り下げ申請によって月額31.5万円の年金は本当に支給されるのか?


塚崎記事には,「最も悲観的なケースでも40年後に2割程度目減りする(年金のみで生活する場合の生活水準が2割程度低下する)ということなので、年金が全く受け取れなくなる、といった心配は無用なようです。」と書いてありました.

本当に2割目減り程度で済むのでしょうか?

年金については人それぞれ収入や加入期間等様々なので何とも言えませんが,将来については不安だらけとしか言いようがありません.勤めている会社が厚生年金をきちんと納めていないケースだってあるのです.

また,どちらかが介護を必要になってしまったら出費だって増えます.もし,60〜70歳の間にそうなってしまったら,70歳以降の生活を見越すどころではなくなってしまいます.連れ合いに先立たれてしまって場合にもそうなるかもしれません.


 

ここまでざっくり見てきたように,塚崎記事はロジックの前提と現状の乖離しているため見通しが甘すぎ,とうてい受け入れられないというのが私の結論です(私の主張もまだまだ甘いかもしれませんが・・・)

ではどうすればいいのでしょうか?

60歳までにやるべきこと

 

将来が見通せないこのご時世,やるべきことはたくさんありますが,私が提案するのは

A.必要な出費は60歳までにすませること
B.60歳からの収入源を再雇用以外に確立すること

の二点です.特にBについては不労所得が望ましいです.60歳以降はいつ病気に見舞われてもおかしくないのですから.


Aについては,住宅ローン,奨学金,それに保険等の支払いを60歳までに終えておくことをおすすめします.私は医療保険とがん保険は払込期間60歳のものを契約しました.奨学金は繰り上げ返済をすませました.

60歳以降,非常に不安定になる経済状況の中での支出を一つでも潰しておくに越したことはありません.

 

browncapuchin.hatenablog.com

 Bについては,70歳からの年金を当てにするのではなく,自分で意識して早い段階から資産を形成し始めることをおすすめします.自分もそうしてれば良かった・・・

大学生〜30代,あるいは40代に突入したばかりの方にとって,60歳なんて遠い未来のことにように思えるかもしれません.私だってその頃に50歳になった自分なんて考えたこともなかったです.でも,国の社会保障制度に疑念を抱いているのなら,少しでも早いうちから老後を意識して行動することの必要性は今後ますます高まるかもしれません.

また,なんとか60歳までに住宅ローン等を完済できたとしても不動産についての固定資産税は毎年払わなければなりませんし,家で生活していれば生活インフラ等の出費はどう切り詰めても発生します.インターネットだってタダじゃありません.特にMacは定期的に壊れます.

私自身の当面の目標は,60歳からの不労所得月数万円を得ることで,全額とはいかないまでのそれらの費用を工面する手段を確立することです.無論,こうしてブログを書いているので,ブログ収益がその一助になればありがたいです.とはいえ,あと10年もしたらアドセンスが様変わりしてて,ブロガーみんな泣いてるかもしれませんけどね・・・なお,FXについては痛い思いをしてるエントリーも目にしますので触れずにおきます.

不動産や各種投資等については自己責任で行ってくださいね.


おわりに

 

年齢に関係なく,お金については日々の生活でいっぱいいっぱいという人達もたくさんいると思います.私も若い頃は家賃2万ちょっと,風呂なし,トイレも玄関も共同の六畳一間で毎月かつかつの生活を5年ほど送っていました.もし,あの頃にグーグルアドセンスから毎月支払われる程度のブログ収益があったら少しは生活費の足しになっただろうにとつくづく思います.

60歳になったときブログ収益等で何らかの不労所得が見込めるのであれば,年金支給までの間の生活が少しでも楽になるかもしれませんし,そうすべきです.少なくとも,甘言しか述べない人の戯れ言に耳を貸すつもりは毛頭ありません.

そういう意味で副業ブロガーがブログ収益に熱心になることは将来のための一環という面もあるのでは,と月初めに多く行われるブログ収益報告を横目にしつつあまりにもひどい記事を読んでしまったので書かずにいられませんでした.お猿記事書きたかったのに・・・

もしかしたら古参ブロガーは気分を害するかもしれませんけれど,ブログを始めたきっかけがアドセンスをはじめとする収益であっても,それはもしかしたら時代の趨勢なのかもしれません.


ではまた!