おまきざるの自由研究

好奇心の赴くままに

サラリーマンの老後の備えはいくら必要?退職金2300万は2割だけ!

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あなたは「普通のサラリーマン」ですか?

「普通のサラリーマン」と括弧書きしたのは,前々回の拙エントリーにて「普通とは何か?」について書いたためです.

「普通」とは時代によって変わるし,その人をとりまく状況でも変わるものと考えています.だから「普通のサラリーマン」という表現を用いるのは無理がある,はず.

けれど,世の中にはさらりと「普通のサラリーマン」を語る人がいます.こんな風に

老後の生活には1億円必要だが、普通のサラリーマンは何とかなる - 塚崎公義(大学教授)

塚崎教授は退職金を2,000万円以上もらい,退職までに住宅ローンを完済する「普通のサラリーマン」が年金受給を70歳に繰り下げるなら年金で生活できると主張します.

以下,一部引用します.

60歳で退職し、退職金でローンをすべて返済し、手元に2000万円残るとしましょう。65歳までは何とか働いて生活費を稼ぎます。65歳から70歳までは、退職金を取り崩しながら食いつなぐとします。月額27.6万円[1]だと1650万円ほどかかります。(中略)

こうして見ると、退職直後に2000万円あれば、何とかなる計算になっています。一生同じ職場に勤めたサラリーマンは、高卒事務系で2000万円弱の退職金が期待出来るようですから、多くのサラリーマンにとって、退職直前の金融資産が住宅ローンなどと均衡していれば、何とかなるということのようです。[1]

 




「うち,退職金そんなに出ないよ・・・」
反射的にそう思ってしまいました.

60歳定年,なおかつ家のローンを払い切っても2,000万円が残るほどの退職金をもらえうような「普通のサラリーマン」は果たしてどれくらいいるのでしょう?

そして,大多数のそんなに退職金をもらえないサラリーマンは老後の備えをどうすれば良いのでしょう?

このエントリーはそんなことについて書きました.

退職金2000万円以上支給されるサラリーマンは何%なのか?

退職金で住宅ローンを完済し,なお2,000万円以上残るのは企業規模500人以上・勤続年数38年

ご存じの通り,退職金は企業規模と勤続年数によって非常に大きく違ってきます(勤続年数別退職給付金は[5]の第21表を参照)

表1.企業規模・勤続年数別退職給付金
企業規模 勤続20年 勤続38年
50〜99人 654万円 1876万円

100〜499人

457万円 1981万円
500〜999人 653万円 2365万円
1000人以上 912万円 2878万円

 

塚崎教授が言うように,住宅ローンを完済してなお退職金が2,000万円残るというのは企業規模500人以上の会社に38年勤務することが条件となります.それなら退職金が2,300万円以上を見込めます.

でも,そんなサラリーマンは全体の何割くらいいるのでしょう?

企業規模500人以上かつ退職金制度がある企業のサラリーマン数は972万919人

企業規模500人以上かつ退職金制度がある企業のサラリーマン数は推定972万919人(表2,作成資料は[3]).

表2.退職金制度割合から推定される各企業規模毎のサラリーマン数
企業規模 退職金制度割合 サラリーマン数
30〜99人 72% 3,539,304

100〜499人

82% 2,685,254
500〜999人 89.4% 3,002,499
1000人以上 93.6% 6,718,420

 

ではこれら約970万人のサラリーマンのうち,退職金をもらえるのは何%でしょうか?

定年まで勤め上げた上で退職金をもらえるのは55.9%

退職金制度のある企業に勤めたサラリーマンがみな定年退職を迎えるわけではありません.

従業員100人以上の企業2,784社を対象とした平均勤続年数はなんと13.6年(ランキング500社の1位は相鉄ホールディングスの25.2年,最低は481位25社の18.1年)[4]

もちろん定年退職を迎え退職金が支給される方はいます.人事院の「参考資料 平成24年3月」[5]によると,企業規模50人以上の退職者9万8,999人のうち,定年退職者は6万5,053人.このうち退職金支給が受けられるが85.1%(5万5,360人)とします.

したがって,定年まで勤め上げた上で退職金をもらえるのは55.9%(5万5360人/65053人)と推定されます.

定年まで勤めて2,000万円以上の退職金をもらえるのはサラリーマンの21.2%にすぎない

企業規模500人以上かつ退職金制度がある企業のサラリーマン約970万人のうち,定年まで勤め上げて退職金をもらえるのは推定543万3,993人(972万919人×0.559).

543万3,993人は,サラリーマン数2561万3,300人(平成24年就業構造調査[2]の雇用者のうち正規の職員・従業員数合計は3387万2,600人から「官公庁など」および「その他の法人・団体」を除いたもの)のうち,わずか21.2%.

したがって,退職金2,300万円以上をもらえるのはサラリーマン全体のわずか21.1%にすぎないことになります.

 

塚崎教授の言う「普通のサラリーマン」なんてせいぜいサラリーマンの約2割にしか当てはまらないのです

そんな戯れ言,誰が鵜呑みに出来るでしょう? 

サラリーマンの老後の備えはいくら必要なのか?

塚崎氏が言うところの定年60歳で退職金2,000万円(2,300万円)以上もらえる「普通のサラリーマン」はサラリーマンのうち約2割しかいないと推定されました.

では,より切実な残り8割のむしろ普通のサラリーマンの老後の備えはいくら必要なのでしょうか?

結論は「人それぞれまったく違うからシミュレーションしよう」です.その理由について「日本という国で、老後を生き抜くために必要な「老後資金」をレポート - RepoLog│レポログ」のデータを用いながら説明します

65歳以降95歳までの30年間に必要な老後資金の自己シミュレーショトの結果はこうなっていました.前提として非常に大きいのは,定年までに住宅ローンを返済し終えていることです.60〜69歳無職世帯での持ち家率93.8%,住宅ローン有世帯割合6.4%,家賃・地代を払ってる世帯割合5.7%[6]という数字を見ると,60歳までに住宅ローンを完済もしくは何らかの形で持ち家を取得してるケースが非常に多いと考えられます.

 

<支出>
●生活費:6660万円(月18.5万円×12ヶ月×30年)
●介護医療費・住宅リフォーム費:800万円
合計7,460万円
<収入>
●年金(70歳から支給):5940万円(月19.8万円×12ヶ月×25年)
●退職金:1440万円
合計7340万円
☆収入ー支出=マイナス80万円


このシミュについて3点指摘します.

①想定された生活費には非消費支出(直接税と社会保険料)が含まれていないようです.[1]によると税・社会保険料支出は約15,000円.けっこう馬鹿にならない金額です.

②退職金は退職所得とみなされて課税される場合があります(勤続年数が20年以下と20年超で退職所得控除の計算式が違います).退職金がそのまま丸ごと懐に入るとは限りません.注意しましょう.

③冒頭の塚崎氏も指摘してますが,年金は支給開始年齢を66歳以降にすることができます.この老齢厚生年金の繰り下げ支給制度を用いると「繰り下げた月数×0.7%」の額が増額されます.上限の60ヶ月繰り下げすなわち70歳から受給開始の場合,60ヶ月×0.7%=42%が増額されます.上記シミュレーションなら19.8万円×1.42=28万1160円となり,この額が生涯継続支給されます(制度変更しなければの話ですが)[7]なおiDeCoについては割愛しました.


◆データの場合,退職金1440万円に課税されることはなさそうなのでそのままとします.

一方,非消費支出分15000円を未来家計簿に上乗せし,年金を繰り下げ受給するとこうなります.

●生活費:7200万円(月20万円×12ヶ月×30年)
●介護医療費・住宅リフォーム費:800万円
合計8000万円
<収入>
●年金(70歳から支給):8434万8000円(繰り下げ支給月28万1160円×12ヶ月×25年)
●退職金:1440万円
合計9874万8000円
☆収入ー支出=プラス1874万8000円

 

お気づきの通り,老後の備えに必要な額はちょっとした年金の知識でがらりと変わります.もちろん,年金額のみならず,生活費および退職金の額は世帯によってぜんぜん違うはずです.

この項の冒頭で述べた通り,老後の備えにいくら必要なのかは人それぞれ違います.ですから生活費,年金,退職金のシミュレーションが大切なのです.

65歳まで働けるのか?

60歳定年退職後の65歳までの5年間の収入をどうやって確保するのか,これはとても気がかりです.

平成28年の調査によると,定年後の勤務延長制度・再雇用制度のどちらかまたは両方の制度がある企業は94.1%にのぼります(企業規模と職種によってばらつきあり)[8].さらには改正高年齢者雇用安定法により,企業は定年65歳未満なら定年引き上げ,継続雇用制度導入,定年廃止のいずれかを選択しなければなりません.65歳まで働く環境はかなり整いつつあると言えると思います.

とはいえ今勤めている会社の現状がどうなのか,将来はどうなるのか(特に給与面)については確認しておいたほうがいいでしょう.

65歳から70歳を乗り切るには

そして最も重要なのは無収入の65歳〜70歳の5年間をどう乗り切るのか?です.年金繰り下げ支給以前に生活が立ちゆかなくなったら元も子もありません.

退職金は5年にもおよぶ無収入期間を乗り切るための大切な原資です.65歳まで取り崩してはなりません.そのため,無収入5年間の必要額を逆算し,退職金と年金を切り離して考えねばなりません.退職金のみで生活できるでしょうか?

●無収入5年間の生活費:1200万円(月20万円×12ヶ月×5年)
●介護医療費・住宅リフォーム費:800万円
合計2000万円

 

まったくの偶然ですが,住宅ローン完済の上で2,000万円の退職金をもらえればそれで乗り切れる計算になります(とはいえ,月の生活費20万円は希望額としては少ないです).それでも退職金が2,000万円に満たないサラリーマンには捻出が困難な金額です.

したがって,残り8割のサラリーマンは老後の備えをなるべくこの額に近づけることが望ましいです(あるいは70歳まで働くか,です).

●65歳までに,退職金+老後資金
=最低2000万円を貯める
(できれば3000万円)

 

退職金2000万円もらえるサラリーマンであっても不測の事態にそなえる資産を備えるほうが懸命です.例えば介護を受けることになり,当初は家族の手助けと介護プランを利用して家にいたけれど家族の負担が限界になり有料老人ホームへの入居を余儀なくされるケースだってあります.

有料老人ホーム・介護施設の入居時費用もさまざまなので一概には言えませんが入居金300万円+(家賃5ヶ月分×60ヶ月)=600万円がかかるケースもあります[9].2000万円+600万円プラスαで3000万円くらいは前もって準備しておいたほうがよいかもしれません.個人的には4,000万円くらいあればなあという感じですが・・・(2015年資料では高齢者二人以上世帯の貯蓄現在高4,000万円以上は18.6%[10]).一方,年金にも退職金にも頼れない方は働けるうちに老後資金を稼いでおくしかありません(母子家庭で育ったのでそれがどれほど厳しいかはよくわかっていますけれど・・・). 

早めに手を打とう

老後の備えについて過度に不安を煽るのは考えものですが,すでに数千万円の預貯金等資産があったり,そうなることが確実に見込める人以外が楽観視するのも困りもの.「普通のサラリーマン」ならなんとかなるなどと言う戯れ言を鵜呑みにしないで早めに手を打つことが肝要なのだと思います.

ではまた! 

参考資料

[1]家計調査年報(家計収支編)平成25年(2013年)の「二人以上の世帯」表番号3-14 統計表各種世帯属性別無職世帯による)
[2]平成24年就業構造調査>全国編>人口・就業に関する統計表[2]http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048178&cycleCode=0&requestSender=searc
[3]結果の概要(4 退職給付(一時金・年金)制度)|平成25年就労条件総合調査結果の概況|厚生労働省
[4]http://toyokeizai.net/articles/-/172342
[5]http://www.jinji.go.jp/nenkin/H23/sankou23.pdf

[6][http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001117248第3-14表 各種世帯属性別無職世帯の1世帯当たり1か月間の収入と支出より内訳より]

[7]最短合格2級FP技能士上巻(2015), pp.27-28.きんざいファイナンシャル・プランナーズ・センター編著
[8]http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/16/dl/gaiyou02.pdf
[9]有料老人ホーム・介護施設の費用っていくら?【老人ホーム全国ネット】

[10]http://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/pdf/h28_gai4.pdf

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