おまきざるの自由研究

マネーと本、ワイン、お弁当。たまにサルとサイエンス

1日野菜350gの根拠って?

当記事はプロモーションを含んでいます。
f:id:browncapuchin:20160810154015p:plain

野菜350g!

巷でよく見かける「野菜350g」.その意味は「野菜を1日350g食べましょう」,ということです. 

でも,どんな野菜を350食べるのか,そして野菜350gの由来を説明できる人はどれくらいいるでしょう?

私も説明できないまま「野菜350g」だけがインプットされていました. 

そこで,このエントリーでは「野菜350gの根拠はなんぞや?」ということをなるべく簡潔に述べたいと思います.

1日野菜350gは健康日本21の数値目標

1日野菜350gの根拠は健康日本21

健康日本21とは「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」と呼ばれる,平成12年から展開された第3次国民健康づくり対策のことです(第1次は昭和53年から,第2次は昭和63年から).

健康日本21は,心臓病,脳卒中,糖尿病などの生活習慣病及びがんの発症にかかわる食習慣,運動習慣,飲酒,喫煙,ストレスなどの生活習慣を改善するこ とで危険因子を減らし,生活習慣病やがんについて,「健康はつくるもの」という視点にたって積極的な一次予防を推進する(http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/jissen/pdf/2.pdf)という厚労省主導の健康施策です.

平成12年(2000年)3月31日付けの厚生事務次官通知にはこうあります(読み飛ばしていただいて構いません).

21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)の推進について
 

 我が国の平均寿命は、生活環境の改善や医学の進歩により、世界有数の水準に達している。しかしながら、人口の急速な高齢化とともに、疾病全体に占めるがん、心臓病、脳卒中、糖尿病等の生活習慣病の割合は増加しており、これに伴って、要介護者等の増加も深刻な社会問題となっている。
 そこで、21世紀の我が国を、すべての国民が健やかで心豊かに生活できる活力ある社会とするためには、従来にも増して、健康を増進し、発病を予防する「一次予防」に重点を置いた対策を強力に推進することにより、壮年期死亡の減少、痴呆や寝たきりにならない状態で生活できる期間(健康寿命)の延伸等を図っていくことが極めて重要となっている。
 このような状況にかんがみ、今般、生活習慣病及びその原因となる生活習慣等の国民の保健医療対策上重要となる課題について、2010年度を目途 とした目標等を提示する「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」(以下「運動」という。)を定め、国及び地方公共団体等の行政にとどまら ず広く関係団体等の積極的な参加及び協力を得ながら、「一次予防」の観点を重視した国民に対する十分かつ的確な情報提供を行うとともに、健康づくりに関わる関係団体等との連携の取れた効率的な取組の推進等を図ることにより、国民が主体的に取り組む健康づくり運動を総合的に推進していくこととしたところである。

 

かいつまんで要約するとこうなります.

①寿命は延びたけど,生活習慣病を罹患する人や要介護者も増えた
②そうならないよう,病気を予防しよう
③病気予防のため,生活習慣病の原因となる生活習慣を改めよう

このための方策として,健康日本21を推進しようということです.

では,健康日本21は野菜350gにどんな役割を求めているのでしょうか?

野菜350gの役割

健康日本21において野菜に期待される最大の役割は,カリウム,食物繊維,抗酸化ビタミン適量摂取による循環器疾患・糖尿病等の生活習慣病及びがんの予防です.1日野菜350gは健康日本21の時点で目標数値化されていました.

カリウム、食物繊維、抗酸化ビタミンなどの摂取は、循環器疾患やがんの予防に効果的に働くと考えられている6)~8)が、 特定の成分を強化した食品に依存するのではなく、基本的には通常の食事として摂取することが望ましい。これらの摂取量と食品摂取量との関連を分析すると、 野菜の摂取が寄与する割合が高く、平成9年で成人の野菜の1日あたりの平均摂取量は292gであるが、前述の栄養素の適量摂取には、野菜350~400g の摂取が必要と推定される9)ことから、平均350g以上を目標とする。引用文中の6)〜9)については栄養・食生活|厚生労働省を参照の上,各自で検索なさってください)

 

しかしながら,野菜の平均摂取量は健康日本21(第二次)の時点で282gへと減少(注:健康日本21(第二次)については健康日本21(第二次)|厚生労働省を参照ください)

具体的な数値についてはカリウムについてしか記載がありませんでしたが,野菜摂取を1日280gから350gにする(70g増加する)ことで,カリウム摂取が140mg増加,さらに果物摂取量100g未満者の割合を現状61.4%から30%に減らすことにより(中略)カリウム摂取が 33mg増加,そのことによって収縮期血圧を0.22mmHG減少させることが期待できるとのことです(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_02.pdf,p.47).なお,収縮期血圧低下については減塩のほうが野菜摂取より効果は高いとされていますが,野菜摂取はカリウム摂取以外にも期待される役割がありますので...

 

上で引用した健康日本21の文集の続きには,カリウム等以外にもカルシウムについても書かれています.

またカルシウムについては、成人で600~700mgの摂取量が必要とされているが10)、平成9年の成人の平均摂取量は571mgである。カルシウムの適量摂取には牛乳・乳製品、豆類、緑黄色野菜の寄与する割合が高い9)ことから、平成9年の成人の平均摂取量牛乳・乳製品107g、豆類76g、緑黄色野菜 98gに対し、各々130g、100g、120g以上を目標とする。


カルシウム摂取に望ましい牛乳・乳製品・豆類・緑黄色野菜の合計目標値が350gになっていますが,これはカリウム等摂取のためものとは分けて考えたほうがいいでしょう.


ただし,健康日本21(第二次)の資料には,豆・乳製品・緑黄色野菜・120gの文言は登場しません.なので,これらを健康日本21(第二次)ではなく,健康日本21による1日摂取量の目標値をあらためて示すとこうなります. 

緑黄色野菜120gを含む野菜350g及び牛乳・乳製品130g,豆類100g.

1食での摂取量じゃないことに注意しましょう.

しかしながら,今は「野菜350g」だけが一人歩きしている感が否めません.こういうのもよく見かけます.

350gの内訳としては、「緑黄色野菜120g」「淡色野菜230g」を目安に、バランスよく食べるのが望ましいとされています。(http://野菜ジュースラボ.com/column/intake.html


でも,このエントリーで用いた健康日本21及び健康日本21(第二次)の資料に,淡色野菜は一切書かれていませんでした.ですから,「緑黄色野菜120g」「淡色野菜230g」などと謳っていることについては疑念を持たざるを得ません.

とはいえ,日々の生活で緑黄色野菜だけ350g食べ続けるのは難しいかもしれませんので,「緑黄色野菜120g」はあくまでカルシウム摂取についての数値目標だということは覚えておきたいところです.

野菜350gの量はこれくらい

では,野菜350g(緑黄色野菜120g含)について,何をどれくらい食べればいいのでしょうか?

「野菜350g」で検索すると,様々なサイトがhitしますが,心臓病・血糖・動脈硬化・脳卒中等にも配慮した文章があったのはこれでした. 

www.jhf.or.jp

1日350gの野菜の画像もあり,それは「おおよそ両手の平に載る量」とのことです.

f:id:browncapuchin:20160810150256p:plain

http://www.jhf.or.jp/topics/upload_images/%E5%9B%B35%E9%87%8E%E8%8F%9C%E3%81%AE%E9%87%8F.JPG

 

家族4人ならこの4倍ですね.さらに乳製品に豆ですか.ふう・・・

野菜に含まれるビタミンKは心臓病で使われるある薬の効果を弱めるし,腎機能に問題がある場合はカリウム摂取量を制限する必要があるとのことです.

やみくもに野菜350gということではなく,個々人の事情に応じて食べる野菜を選ぶべきなんでしょうね.

 

ではまた!

プライバシーポリシー/Copyright©2015-2024 おまきざるの自由研究 https://www.omakizaru.com